2013-07-08

みどり使用音楽巡礼の旅 #1 ジェラシー/エスパーニャ・カーニ


激動の2013-14シーズンが幕を開け、選手がどんなプログラムで滑るのか待ち遠しく胸が踊る7月上旬、皆様いかがお過ごしでしょうか。

これから不定期で伊藤みどり選手がプログラムで使用した音楽・音源と、それにまつわる話などしていこうかなーってなことで記事にしてみました。




1991-1992シーズン オリジナルプログラム



今回取り上げるのは、みどりアマチュア最後のシーズン(後の一時復帰を除く)となった1991-1992シーズンのOPで使用した『Jealousy/Espana Cani』です。
みどり全盛期の頃、ショートプログラムはオリジナルプログラムという名称でしたので、その時期のものはSPではなくOPと表記しています。

では、元のプログラムを。
91年NHK杯と92年アルベールビル五輪のOPです。

Midori Ito 1991 NHK Trophy OP


この動画は長年 『Midori Ito 1992 Jalousie Espana Cani』 というタイトルのままなので勘違いしている方も多いかもしれませんが、アルベールビル五輪前年の1991年秋に広島で開催されたNHK杯での演技です。
この少し前・アルベールビル五輪前哨戦と言われたラリック杯(オリンピックと同じリンク)よりもNHK杯の方が出来は良かったので今回はこちらを。

みどりのジェラシー』といえばやはり豪快な3A-2Tを決めたこのNHK杯の演技をあげる人が大多数でしょう。
この後、使用音源を紹介しますが、前半(この動画では1:14まで)がパーシー・フェイス楽団の『ジェラシー』、後半(1:15以降)サーキュラーステップに入っていくところからがシンシナティ・ポップス・オーケストラの『エスパーニャ・カーニ』です。




こちらはアルベールビル五輪のOPです。

Midori Ito (JPN) - 1992 Albertville, Ladies' Original Program

(演技は4:03頃から始まります)
今でもこの演技を見るのは辛いという人もいるでしょうが、曲の編集や演技構成の違いをNHK杯と見比べてみてください。

曲の編集はフリー同様、オリンピックに向けて見直し・再編集されたものです。
これまで滑ってきて演技全体の中でより滑りやすいように変更したのでしょうが、私個人としてはこの曲の再編集はあまりいただけない。
ジェラシーの一部をカットした上にさらに不自然な繋ぎ(5:16)、サーキュラーステップに合わせたと思われるエスパーニャ・カーニのクドいリピートがどうもね。その分、最後のキャメルスピンのところのリピートをひとつ削って時間を合わせたようだけど、これは違和感なし。

それでも演技全体としてはこちらの方がまとまっていて断然いいですね。
演技開始の振り付けはタンゴのリズムに合った歯切れがよく機敏な動きに変更されました。
3Lzを失敗した後のレイバックスピン、これが指先にまで神経を行き届かせた手の動きをうまく変化させることによってとても美しいラインを生み出しています。
元々みどりのレイバックは軸がまったく動かない芸術品ではありましたが。NHK杯の終盤に入れているレイバックと見比べるとその違いがよくわかりますよ。

(当時、OPはそのシーズンで決められたダブルジャンプを組み込む規則での)2Fも、さらに前後の動きに工夫を取り入れています。
イナバウアーの流れから、腕を胸でクロスして締め付けるのではなく下に降ろした難しいポジションでの2F、着氷の瞬間の腕の振り付け、より高難度なものに進化しています。

曲の再編集と構成を入れ替えたことによって、ステップの途中で曲(ジェラシーとエスパーニャ・カーニの繋ぎ目)に合わせて止まって振り付けを挟むといった事がなくなった分、流れが途切れることなくスムーズになりました。スパイラルのポジション維持も長くなってます。そして2Aを終盤に持ってきたことにより全体を引き締める印象を持たせます。

NHK杯では2Fを跳んだ後(ジェラシー部分終りの方)に入れていたコンビネーションスピンをオリンピックではフィニッシュに持ってきました。NHK杯はシットスピンから起き上がって唐突に終わらせた、みたいな印象だったから構成を入れ替えて大正解。
このシーズンだけ取り入れてた、左足をクロスさせて手のポジションが胸の位置からだんだん上へ向けて開いていくスピンが好きなんです。(勝手に『つぼみが開花していくスピン』と呼んでました。どれになるんだろう。クロスフットレイバックスピンでいいのかな。)


ここまで読んでみてもう一度NHK杯の演技を見ると、足元がややホップ気味な印象を受けるかと思います。そしてさらにオリンピックの方を見てみると足元が氷に吸い付いて全体の動きもタンゴ・パソドブレのリズムに乗った洗練された演技へと昇華しているのを感じませんか?
シーズン集大成の演技でもあるわけだから数ヶ月前とは進化していて当たり前なんですけどね。
この編集・構成で滑ったのはこの時たった一度きりの披露となってしまいました。

大事なオリンピックの最初の演技でまさかの転倒、自力では金メダルは獲れないOP4位。精彩を欠いた演技といったマイナスイメージばかりに囚われていないで演技そのものを見直してみませんか?
これだけの重圧がかかった試合で最初のジャンプを失敗するということがどういう意味を持っていてどれほどのダメージなのか、転倒した瞬時にわかったはずなのにとっさに本能で2Tまで跳んでしまう、その後も崩れることなく果敢にこれだけの演技を見せてくれたみどりを私は尊敬します。
改めて見てみればこの時代にどれだけ高度なことをサラリとやってのけていたかを再確認できることでしょう。
20年以上経った今でも別の角度・視点で見てみればいくらでも新しい発見があるのです。
フリーのラフマニノフ・終盤トリプルアクセルの演技だけがみどりの銀メダルではないの。このオリジナルプログラムの演技こそ再評価されてしかるべき、と私は思うのです。


この動画の冒頭、すでに演技を終えたトーニャ・ハーディングのリプレイが短く流されます。
この時・そしてフリーの時と、もし滑走順がみどりよりも前のハーディングが先に3Aを成功させていたら、オリンピックで女子選手が初めてトリプルアクセルを跳んだのはトーニャ・ハーディングだと記録されていたのです。
このオリンピックシーズン序盤、スケートアメリカではOPで3A-2T、フリーで3Aを成功させているのですが(ショートでの3A、3Aからのコンビネーション、1競技会のショート・フリー両方での成功はいずれも世界初・みどり91年NHK杯より一足先)、持病の喘息もあってか前シーズンのような勢いは徐々に失われてきて、この時もキスクラではしきりに咳き込んでいました。

そして、この日朝の最後の公式練習の模様が流されます。ボナリーが試合では無関係であり禁止されているバックフリップをみどりの曲かけの時間に、最初の3A-2Tを跳ぶ直前のところでリンク中央で一発かましたという、その“ニアミス事件”。
これについては以前3大みどり記事で書いたので、これ以上はもうここでは触れません。

このボナリーのバックフリップ事件だけではないにしろ、試合が近づくにつれてナーバスになりどんどん調子を落としてしまったみどりは試合直前に難度を落として3Lzに変更する決断を下します。
いつものみどりなら確実に飛べるはずだった3Lzでまさかの転倒。
とっさに起き上がって2Tを跳んだのも驚異的だけど、これ、今の採点だとコンビネーションって認められないのかな?

この時のイギリスジャッジはフリーの時もみどりには厳しかったですね。フザケンナヨ


Midori Ito 1992 Albertville Olympics OP Practice

まだ調子を保っていた頃のサブリンクでの曲かけ練習。動画は演技途中までしかありませんが、これが本来滑るはずだった3A-2Tを入れた演技構成でした。

やっぱりこれを見てみたかったね。でもこれがオリンピックという魔物。


余談。
このオリジナルプログラムの演技、冒頭に「ピー」って音が入ってるでしょ?演技開始の合図みたいな。これは必要なのかなぁ。いらないよね?
去年のロンドンオリンピックの新体操でもピー!ピー!うるさかったんでこれ思い出してたんだけど。




Percy Faith - Jealousy
※ 古いレコードのノイズが混ざっています

España Cañí - Cincinnati Pops Orchestra

パーシー・フェイス楽団の『ジェラシー』、シンシナティ・ポップス・オーケストラの『エスパーニャ・カーニ』、どちらの楽曲もラテンのよくありがちなものとは一線を画した個性的なアレンジ曲ではないでしょうか。エスパーニャ・カーニは社交ダンスで使われるものとは別モノといってもいいでしょう。
この音源を探し当てるまでにかなりいろんなの聴いたっけなぁ(遠い目)
どちらの曲もアドレナリン吹き出すわぁ。テンション上がるぜ!
ジェラシーの最初のところ、ずっと「ベルサイユのばらの主題歌のイントロっぽいなぁ」って思ってたけど、改めて聴いてみたらそれほどでもなかったでござる。
いちいち濃いセリフ  (//∇//) が挿入されているのはアンドレ(志垣太郎)の声です、って今はそっちは置いといてね。(← 自分で書いておいてw)
「つか、アンドレ=あかんたれのイメージが個人的に拭えないという­不幸…」
っていうコメントが目に入ってしまったんだす (´・ω・`)

ジェラシー


ジェラシー
[Limited Edition, Original Recording Remastered]
パーシー・フェイス楽団

Tara



Tara's Theme / Jealousy [Import]
パーシー・フェイス楽団

ジェラシーはこれまでもフィギュアスケートではよく使われてきていますよね。鈴木明子選手が数年前に使用していた、あれなんかはよく聴かれる『定番のジェラシー』でした。あっこちゃんにはドンピシャのハマリプロだったなぁ。
上記のCDの下のものはジャケットを見てわかるように、二枚のアルバムをひとつに収めたものです。(ただし、一曲欠けているらしい)
イージーリスニングを作業用BGMとして流すにはこの二枚組インポートの方が断然お得。

Fiesta



Fiesta [Import]
Erich Kunzel, Cincinnati Pops Orchestra

『エスパーニャ・カーニ』のこの音源は、サーシャ・コーエン選手がバンクーバー五輪を目指して復帰した時のプログラムと同じものです。編集はかなーり強引だったけど ( ̄∀ ̄)
みどりちゃん場合の『エスパーニャ・カーニ』はこの原曲を聴くと「え、演技で使われた部分ってこんな短いの?こんなにあっさり終わるの!?」って思うけど、これはフィニッシュに向けてじわじわと盛り上げていくためにリピートを自然に聴こえるように繋ぎ合わせた編集の腕のなせる技ですね。
この演技でのこの編集しか知らなかったら元がこういう曲だとはわからない。それがまた原曲を知って聴く面白さ・奥の深さ・楽しみでもあるのです。

同じ曲でもそれぞれのアレンジや、さらにそれをどういった編集で滑るかでもまた印象は変わってきます。

こちらは社交ダンスのパソドブレ、エスパーニャ・カーニ。
Michael Malitowski & Joanne Leunis - Paso Doble

は、激しいっすね・・・(//∇//) 世界チャンピオンの演技です。
フィギュアスケート脳なのでアイスダンス的に脳内変換されますが。




いかがだったでしょうか。
興味がある方はちゃんとした音源(CDなりMP3購入等)で聴くのをおすすめします。
フィギュアスケートで演技で使用する編集された一部分しか知らなかったのが、
「え、この曲って全体を通して聴くとこんなだったの!?」っていう新しい発見とともに新鮮にも感じられるし、
「なんでここでブツ切りするの!?」とか、その内「私だったらココとこの部分を使うのになぁ」とか脳内編集妄想したりとか、
さらには楽曲そのものに興味を持っていろんなアレンジのものを聴いてみたりとか、それはもう捉え方次第で世界は広がっていきますよ。

これからシリーズで取り上げていくプログラムは時系列ではなく、その時の気分でランダムにやっていく予定です。使用音源についてはわかる範囲で。
不定期ではありますがこんな感じでこれからもよろしくです。




 
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