昨年12月のGPファイナル、1月の欧州選手権を制して勢いにのるエリザベータ・トゥクタミシェワ(18=ロシア)が、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させ、女子SP歴代3位となる77・62点で首位発進を決めた。
 その瞬間、会場が異様な熱気に包まれた。「ボレロ」の力強い調べに乗って、トゥクタミシェワが滑り出す。今大会の練習から挑戦しており、すでに話題を独占していた18歳。ゆったりとした動きで踏み切りに入ると、滞空時間が長いジャンプをみせた。体が3回転半回って再び氷を捉えると、観客からは驚きと称賛の大拍手が起きた。
 3回転半を公式戦で決めた選手は、伊藤みどりに始まり、これで6人目となる。日本人には浅田真央の代名詞としてなじみがあり、現役選手では浅田しか成功していない唯一の武器でもあった。その浅田がフリーで2回の3回転半を決めるギネス記録を出した10年バンクーバー五輪以降でみても、この約5年間では公式戦で挑戦する選手すらまれな状態になっていた。
 それが1月から本格的に取り組んだトゥクタミシェワが、いきなりの成功。それも世界選手権という大舞台での一発だった。彼女はその意義について、「50%は着氷して、50%はミスしていた。でも、フィギュアスケートの進化するために必要だし、将来多くの女子選手が挑戦してほしいから。男子は数種類の4回転にも挑んでいる。女子も進化が必要です」とSP後の会見で気丈の述べた。バンクーバーからソチまでの4年間で、浅田以外の成功者は0人だった。ソチから18年平昌五輪まではどうなるのか。今回の挑戦、この一言が大きな契機になる可能性はある。
 トゥクタミシェワという存在が挑戦したことも意味がある。多くのロシア人選手がそうであるように、彼女も10代前半までは3回転半に取り組んでいた。しかし試合で組み込むまではいかずに、その間に成績も低迷していった。原因の1つは体重の管理が難しく、ジャンプを崩したためだが、その彼女が再び練習を開始して、短時間で成功までもっていった。
 体系的にも浅田とは違い、がっちりとした体形で、進入速度も決して速いとは言えない。それだけに、多くの選手に希望とヒントを与える成功にもなったはずだ。次の挑戦者は誰か。日本人も含めて楽しみな来季となりそうだ。